2009年10月21日水曜日

Social Value Creation

Class of 2010のMTです。

今回はスミスのソーシャルアントレプレナーシップに関するご紹介です。スミスでは2009年に、The Center for Social Value Creationという部門を立ち上げました。

これまでソーシャルアントレプレナーと言えば、ノンプロフィットや慈善団体による活動というイメージがありましたが、今日では、多くの企業が、自己の利益最大化を超えて、社会的問題までも取り扱うようになりました。さらに企業を評価する基準も、トリプルボトムラインという言葉で知られるように、Economically, Socially, Environmentallyと単純な企業収益に着目するのではなく、企業の社会的役割を重視するようになりました。

そのような流れはスミスにおいても顕著に現れています。授業のカリキュラムにおいても、Ethicsはもちろん、SustainabilityやSocial Entrepreneurにフォーカスをあてた授業が設けられるようになりました。また、必須科目においても、2008より、それまでのMBAコンサルティングプロジェクトに変わり、Team Work and Integrationという名の下、Social Ventureのコンサルティング活動が組み入れられました。

今年、満を持して、The Center for Social Value Creationが立ち上がりました。さまざまイベントが企画され、Dean自らも、そのPR活動に力を注いでいます。また、First Yearのオリエンテーションでは、DC Central Kitchenでのコミュニティーサービス活動が組み込まれるなど、学外活動においても非常にさかんに取り組まれています。

DCという立地もスミスのSocial Entrepreneurへの活動に数多くの価値を提供してくれています。アショカ財団との密接なつながり、先述したDC Central Kitchen、Honest Teaなど多くのSocial Entrepreneurとの生のコンタクトなど。

The Center for Social Value Creationのホームページもぜひ一度訪れてください。

2009年10月8日木曜日

とある授業風景

Class of 2010 のTMです
今回は授業についてご紹介したいと思います。

グローバルエコノミクスの授業で、途上国で起きている問題のひとつとして、治療法が発見されていない難病である“river blindness(川のそばで発生する失明にいたる病気、とでも訳しましょうか)”が取り上げられました。

グ ローバルエコノミクスの授業では、先進国と途上国の格差問題、途上国が抱える貧困等の問題、先進国で起きている問題が毎回取り上げられ、新聞や雑誌等の資 料を使い、問題の究明・理解からはじまり、内容によっては、いかに解決するのか、社会貢献できるのかについて議論がされます。

日々、危機 感なく過ごしていた私には非常に馴染みのない話題でしたが、格差社会がもたらす問題のひとつとして、近年「neglected diseases(人しれない病気)」が大きく取り上げられているようです。「人知れない病気」とは、難病として発生しているものの、病名すら存在せず、 新薬の研究開発すらされていない病気のことで、WHOの報告には、20万人以上の感染者が存在するともレポートされています。今回取り上げられた river blindnessはそのひとつになり、アフリカ奥地で小さな寄生虫もしくは蚊によって感染し、最後は失明にいたるという難病(奇病)で、アフリカの30 カ国で発症が報告されています。

残念ながら、私たちが日々耳にするエイズなどの先進国でも発症が多い難病については莫大な研究費用が費や され対策が講じられていますが、アフリカやアジアの貧しい国々でしか発症していない難病については、経済的効果から製薬会社他においても研究開発もされて いないというのが実情です。また、NPOも巨額の研究費や特許の問題が介在するこの手の分野では、なかなか打開策を見つけられない、というのが現状です。

ではこのような問題に対してどのような対策ができるのでしょうか? 宿題として渡された資料や、授業冒頭での生生しい映像を使った説明の後に、クラスは議論に入ります。

先進国の政府で資金供出すればいいのでは? というコメントには、

そ もそもアメリカ国内での医療問題(国民皆保険になっておらず、個人が民間保険会社から保険を購入する必要があるため、貧困層には適切な医療を受けることす ら出来ていない事実がある)の解決ほうが先決。という意見や、この不況時に遠い国の名も知らぬ病気の研究に税金が使われることに対し、国民の理解が得られ るのか? という意見が対立します。

では、一部の富裕層が現在でも様々な基金(例えば、マイクロソフトの元社長ビルゲイツによる慈善基金団体など)を創設しており、そこへ働きかけて寄付を募り資金を集めればいいのでは? というコメントには、

確 かに一部ではそのような活動は行われているものの、今回のriver blindnessのようにすでに公に取り上げられているような病気だけではなく、今もなお何千という奇病が発生しており、一方で、このような病気の問題 だけでなく貧困における様々な問題は存在しており、優先順位をつけることが難しい、とのコメントが寄せられます。

大手企業に税金優遇策等を打ち出し、寄付をさせてはどうか? というコメントには、

富 裕層の基金と同様、この病気の問題解決への資金供与が果たして他の格差問題より優先するのか?どう優先順位をつけるのか? という意見や、そもそも利益が 出ている企業がこの不況時に少ないし、好不況に影響される資金供与が効率的であるのか?という、しごくもっともな意見が出されました。

製薬会社で働いていたという同級生から、新薬開発への研究費は何百億という資金を要し、研究及び特許の取得に何年もかかるもので、資金があれば簡単に解決できる問題ではない、という現実味あふれる指摘がありました。

打 開策はないものか、と議論が進む中、一人のクラスメートが「そもそも我々一人ひとりがこのような問題を認識していなかったこと自体が問題であって、楽観的 かもしれないが、問題を広め、世論を味方につければ、何らかの対策は少しずつでも生まれるはず。だから、我々の使命は、これを広めることからはじめなけれ ばいけない」とコメントし、皆が納得、議論が終焉へと向かいます。

結局結論は出ないままですが、全く無関心であり無知であった分野だけに、同じ地球に生きるものとしての責任感を考えさせられた2時間でした。